I swam in the ocean

自分の中の何かしらのアンソロジーみたいなものです

時計の修理をする自転車屋さん

高校生の時、腕時計を買った。

 

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5000円くらいで、ベルトは偽物の白い皮で、胴の部分は透けていてムーブメントが見る時計だった。

ねじまき式で1日もたたないうちに竜頭を巻かねばならなくて、

細い針も見えにくいし、文字盤がないので、時間を見るためのものというよりも、

歯車が動くのを見るための、そしてチッチッチッチッという鼓動を出す動物を腕に飼っているようなものだった。

 

しかも、もともと腕時計をつける習慣は昔も今も無い。けど欲しかったから買ったのだった。

 

ある日その針が、時計の中で取れてしまった。

どうしよ、どうしよ、と思っていると、ふと閃いた。

こないだ自転車のパンクの修理を出した自転車屋さん、ガラスに「時計修理」と書いていたような…

 

そのお店は、車のよく通る道の内側にこっそり建っている、大昔からやっているような自転車屋で、お爺さんだけが従業員、みたいな小さなお店だった。

 

早速持っていったら、お爺さんは時計を見ながら、うーんとうなって、

急ぐのかな?直せるか分からないけどいいかな?といったような感じで時計を受け取ってくれた。

 

何分の時間だったか、はたまた何日の期間待ったのかは忘れたし、いくらだったのかも忘れたけれど、取りに行くとしっかりと直っていた。

 

「ぴったり合う竜頭が無かったから、削って作った、直ったよ、はい」という感じだった。

 

竜頭とは、そのとき知ったけど、あのネジを巻く部分のことだ。

それを、このお爺さんは、父から言わせれば「5000円の時計なんておもちゃみたいなもんだけどね」という時計のために、無理難題を押し付ける高校生のために、新しく削って作って、修理してくれたのだ。

 

父は時計を集めていた時期があるので、大人の時計の価格からすれば5000円の時計はおもちゃ、と言ったものの、

修理から返ってきた時計を見て、私の話を聞いて「へ〜。ほ〜ん。そのお店どこ?」など興味を示しているようだった。

 

 10年前くらいのことだが、その思い出が好き過ぎて、今ふと思い出したので急いで書いてみた。

 

ゼンマイが動くのが見える時計が好きなんだよな

 

今日の本

時間泥棒が出てくるぞ、気をつけろ!↓

モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語

あんまり時計は関係ないけど心惹かれる種類が近い感じのする物語↓

機械仕掛けの愛 1 (ビッグ コミックス)

ロボッとうさん 1 (ビッグコミックス)