ものすごく思い入れのある木、という訳ではないが、バオバブの木が好きだ。
あの大きくて、日本にあるような木とは形がかけ離れており、根っこと葉っぱがひっくり返ったような形をしているのがおもしろい。
おそらく、バオバブに関する一番古い記憶は、社会の授業の資料集で見たアフリカのバオバブ並木だと思う。「悪魔の木」と別名があったような気がする。
(また最近知ったのだが、バオバブには年輪がないとのことであった。ますます面白い木である。調べたところ「成長とともに年輪は消え、また古いバオバブほど内部に巨大な空洞ができているため、従来の方法で樹齢を調べるのが難しい」と書かれていた。)
他にも、読んで虜になった本である『星の王子様』にバオバブが登場し「育ててみたいな」と思ったわけである。
そのバオバブを育てたい欲があった当時は沖縄に住んでいたので、もし育てるにあたっても日光量に関してはとても心配ということはなかった。
近くの植物屋ではバオバブなんぞ売っていないので、ネットで探したものの、やはりある程度育っているバオバブの木は値段が高い。
また、どんな観葉植物でもそうだが、ある程度育っている植物を買う時、「ここまで育っているものを、自分の手で腐らせたり枯れさせてしまったらどうしよう…」と思ってしまう。
なので、結局バオバブの種を購入したのであった。
ここで誤算だったのは、バオバブを発芽させるのめっちゃ難しいじゃん!ということである。
届いた種は、小指の爪くらいの黒いコロンとしたものであった。
可愛い見た目に反して、何しろ外殻がべらぼうに硬いのである。
調べたところ、自然界では象とかの動物が実を食べて、その強い胃酸でその外殻を溶かし、排出され、そこで水を得て発芽するようであった。
そのため、普通の、アジア圏(日本)で育つような種の、「一度冷蔵庫で冷やして冬と勘違いさせて、外に出して日光に晒して水をやり…」みたいな方法では発芽しないのである。
調べた方法としては、「強い酸につけて殻を溶かす」もしくは「鉄やすりで殻を削る」ことをして中心部に水を届けられるようにする必要があるのだった。
もちろん強い酸などは持ってないし、鉄やすりも持ってない。
爪切りについていたやすりで削ってみるがうんともすんとも言わず。外に出て、ゴリゴリのコンクリートにこすりつけてみたがうんともすんとも言わず。という結果であった。
他にもできないか調べたりいろいろやってみたものの結局反応はなく、諦めてバオバブの種はつやつやと黒いまま、そのままになっている。
バオバブ、強い…
こういうことになるなら、少し育ったバオバブの木を買っても良かったかもしれないなと思う。
今は沖縄から北上し、冬は山から極寒の風が降りてくるようなところで暮らしているので、バオバブが生きるのには厳しい環境のため、お迎えはできないな、と思っている。
まぁ結局私は発芽させられなかったのだけど、種は種のもままでも良さそうな気もしてきた。
新聞記事かなんかで、日本の1000年前の乾燥した種の発芽ができた、という話や、
現代版のノアの方舟として、高緯度のところに種の保存庫「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」があるというなんともロマンを感じる情報も最近知った。
私のバオバブの種も、人類が絶滅したあと、ひっそりと発芽するかもしれないね。どうかしら。
⬛︎
今思えばなぜ星の王子様の住む星に、バオバブの種がやってきたのだろうか…
どの分野でもそうだけど、植物に関する沼にハマると怖いわよ、手乗りの小さな植物が数万円したりするからね、フヒヒヒ…
これとても面白かった、昔からプラントハンターは居るものの、現代のプラントハンターもとても面白い