I swam in the ocean

自分の中の何かしらのアンソロジーみたいなものです

夜の音

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寝るときにはなるべく窓を開けて寝たいと思っている。

というよりも、家にいる間は、寒くない限りずっと窓を開けていたい。

 

防犯上仕方なく家の窓全てを閉めて寝ているが、階数が上の方の時や、治安が良いところに住んでいたときは必ず窓を開けて寝ていた。

 

それは、夏も冬もかわらず。

冬の冷たい空気は、川の上流の水みたいに新鮮な感じがして、息を吸うだけで肺を洗うような気分になる。

夏は暑くてしんどいけど、扇風機をゆるく回しておく。庭の虫が鳴く。

 

たぶん窓をずっと開けていたいのは、風が家を通り抜けていてほしいからだ。空気への渇望があるのだと思う。

 

今住んでいる家は、夜眠りにつく前、船の汽笛が聞こえることがある。海までは3キロ。でも、船となるともう少し遠くから発せられるのであろう。

線路を走る電車の音も聞こえる。

遠いとこの音が聞こえるなあ、と思う。

 

遠いのに、皆が眠っているものだから、邪魔するものが無くて私のところまで届く。でも、音は空気にだけは揉まれて、私のところに来るまでには角がとれた音になる。

 

実家に住んでいた時は、家の隣に給水設備があった。

そいつは、夜のちょうど寝るか寝ないかの微妙な時分を狙って、形容しがたい音を立てて働き始めるやつだった。

数分働いた後、最後は「キュイ」という大きな蛇口が閉まるような音がして、そいつの仕事は終わっていた。

 

その音で思い出されるのは、夏の蒸し暑くて、家中の窓を開けて、氷枕を使って、扇風機をゆるく回して、タオルケットだけをお腹にかけて、という夜だ。

 

カナダでは、2ヶ月近く地下のベッドルームで寝ていた。窓のない部屋で、息がつまるような気がした。土の中の生き物は、強いなあと思った。死んだら棺桶に密閉されずに、風にさらされるところにいたい。

 

それぞれの国で寝るときの音は違うだろう。

いつかの夢だけど、波の音が聞こえるところで寝てみたいなあ、と思う。

 

ここ数年は、夫と寝ている。

大きなベッドなのに、夫は私のほうに寄ってくるし、そんなもんだから私はベッドの1/5くらいしか使ってないんじゃないかと思うし、私の掛け布団に入り込み、うるさいいびきを立てて、重い足を私の体に巻きつけて、勝手に暑くなって足元に布団を蹴やり、寒くなったら自分の掛け布団に戻っていくのだ。

そして私はがたがた震えながら夜中起きて冷たくなった布団を再度自分にかけるハメになる。

 

別のベッドがいいなあと思う。笑

 

夜の本

南の子供が夜いくところ (角川ホラー文庫)

夜間飛行 (新潮文庫)