取るに足らない話をするけど、
私は電車に向かって走る人の姿が好きだ。
それが子供でも、大人でも、男でも女でも。
電車にのるために走る人は特に朝に多い印象。私も電車に向かってよく走る。朝シャワーを浴びたのが台無しだな、と思うくらい、じんわり汗をかいてしまう。
走る人らは後ろから迫ってくる。後ろから走る足音が聞こえ、私の横をタッタカ通り過ぎ、電車をめがけて走る。
その後ろ姿を、間に合うのかな、頑張れ、と思って眺めるのが好きだ。なぜだか分からないけどさ。
ちなみに、私の通勤の道は
電車のドアまであと残り5分かかる場所から改札までの間の道が最高だ。
まず桜の木が見えてくる。春は綺麗だ。ひらひら落ちる桜の下を、人がいなければ花びらを捕まえながら歩く。
発展途上の庭にじわじわと植物が増えていく様子も垣間見える。
曲がり角を曲がる。するとどこの家からかは分からないが、お線香の香りがする。冬も素敵で、道の両側が椿やら南天やモクレンで華やかになる。
ずっと歩く。すると今の季節は見事な梅の花の木が見えてくる。滝のような形をしている梅の木で、横目でチラチラ見ながらあるく。人がいなかったら匂いも嗅ぐ。夏はあの芋のでかい葉が見えたりする。
時々猫がいる。声をかけるが無視される。
そして改札にたどり着き、満員電車にぎゅうぎゅうに詰め込まれて戦闘がスタートするのだ。
ちなみに帰りの改札から出てその道を歩くのも最高だ。夏や雨の日は電車から降りた瞬間に湿気と土の香りがし始める。
戦場から帰ってきて、体にまとわりついた喧騒を、その湿気た空気で薄めていく感じ。
そこの最高の道みたいなところがこの世にたくさんあるといいな〜と思う。
電車の話